2023年より長野県の黒姫童話館で行われている「エンデキャンプ」。全国からエンデファンが集い、語らう、2泊3日のこのイベントは、発起人が『影の縫製機』新装復刊プロジェクトに挑戦するきっかけとなりました。そのエンデキャンプを第1回から支えてくださっている実行委員会代表の浅田圭美さんから応援メッセージをいただきました。(発起人 山口)
ミヒャエル・エンデは、私たちが世界を「分けて」「分類して」理解する方向にばかり進んでいることに、深い危機感を抱いていたように思います。
『影の縫製機』は、私の「外」と「内」、「現実」と「ファンタジー」——
これまでどこかで分断されてきた世界を、そっと“つなぎなおす”ための詩集です。
この夏、長野県・黒姫童話館にて開催する「エンデキャンプ2025」では、エンデの詩の世界にも触れてみたいと思っています。
ゲストには、『影の縫製機』の翻訳者である酒寄進一先生をお招きしています。
エンデは、ドイツ語の響きやリズムを巧みに使いこなし、まるで“ことばあそび”をするように詩を書いていた印象があります。
残念ながらドイツ語がわからない私は、そんな韻律をもつ詩の数々が、日本語に訳されるときに、その魅力を失ってしまうのでは……と、どこかで不安に思っていました。
けれど『影の縫製機』を読んでみると、幻想的で謎に満ちたリズムが確かに感じられます。日本語に訳されてもなお響く“音”が、この詩集にはあります。
『影の縫製機』は、読んで理解するというよりも——
感じることで、“読み手のなかに想像力がうまれる”本です。
エンデはきっと、
「自分が書いた詩や物語のその先」、
「わたしたちのなかに潜むファンタジー」にこそ、希望を見出していたのだと思います。
エンデの作品は、わたしたちの内側にそっと触れて、すっと入り込んでくる——
まるで、「外」と「内」をつなぐ“扉”のようなもの。
いま、この本が復刊され、たくさんの人のもとへ旅立っていくことを、
キャンプの仲間たちと一緒に、心から楽しみにしています。
—— “見えないもの”をともに感じられる仲間が、
ファンタジーと現実、このふたつを行き来する仲間が、
この本の復刊とともに、これからも、少しずつ増えていきますように。
浅田圭美(あさだたまみ)
エンデキャンプ実行委員会 代表
エンデキャンプの呼びかけ人・影山知明さん(クルミドコーヒー/胡桃堂喫茶店 店主)との出会いをきっかけに、“社会思想家としてのミヒャエル・エンデ”の世界に出会いました。影山さんが『大きなシステムと小さなファンタジー』(クルミド出版)をご執筆中にお声かけいただき、エンデキャンプ2023(以降毎年、長野県信濃町「黒姫童話館」にて開催)の立ち上げをご一緒しました。“わたしのなかのファンタジーにひたる時間”の大切さに気づき、「こんな時間を守りたい」と思うようになり、実行委員会を立ち上げました。
エンデキャンプは、今年で3年目を迎えます。森で寝転びながら、自分のなかのファンタジーに耳を澄ます3日間。よかったら、ご一緒しませんか。
【エンデキャンプ2025】7/31までお申し込み受付中!
2025年8月22日(金)〜24日(日)
https://douwakan.com/archives/14872
発起人ももちろん今年も3日間参加します!
『影の縫製機』の貴重な原書(『Die Schattennähmaschine』)を持って行きますので、
この作品の素晴らしさを、ぜひご一緒に味わいましょう!
エンデキャンプ2024にて。子どもたちにも大人気の浅田さん。